唯一無二の赤ワイン【アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ】

唯一無二の赤ワイン【アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ】

ステイホームのもと、外での娯楽は少なくなりましたが、そんなときこそ自宅でゆっくりとワインを楽しみたいもの。上質なワインを堪能したいというときに、どんなワインをチョイスしますか?そんなときにおすすめしたい「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」。

ワイン愛好家をひきつけてやまないこの赤ワインの醸造工程はユニークで、ほかのワインでは味わうことのできない芳香と凝縮感があります。今回は、そんな唯一無二の味わいのアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラをご紹介します。

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラとは

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラは、イタリアのヴェネト州ヴァルポリチェッラ地域で造られる赤ワインです。ロミオとジュリエットで有名なヴェローナの北西約15キロのところに位置します。この地域では、伝統的に「レチョート」という甘口ワインが造られていました。レチョートは、陰干ししたブドウから造られ、ブドウがアルコール発酵する際に糖分が残るために、甘口になります。

じつはアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラは、レチョートの失敗作でした。1936年、ヴァルポリチェッラ・ワイン協同組合の蔵の責任者アデリーノ・ルッケーゼが、樽の中に忘れられて残糖度が低くなってしまったレチョートを試飲しました。それは、甘くなく、複雑味があり、ストラクチャーのあるワインになっていました。彼は驚き、「このワインは、アマーロ(苦い)のではない、アマローネ(アマーロの比較級)だ!」といったことから、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(ヴァルポリチェッラ地域で造られるアマローネ)と名付けられました。そして、アマローネは世界的に有名になり、ワイン通を魅了するワインとなったのです。

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラの醸造工程

甘口のレチョートが辛口になったワインですから、アマローネも陰干ししたブドウから造られます。ブドウ品種は、この地方の土着品種であるコルヴィーナ・ヴェロネーゼ、コルヴィノーネ、ロンディネッラが主に使用されます。収穫されたブドウは、スノコの上に置かれ、「フルッタイ」と呼ばれる風通しのよい部屋で、100~120日ほど自然乾燥(アパッシメント)されます。アパッシメントにより、ブドウの水分が取り除かれ、糖度が上がり、これこそがアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラの凝縮感を生み出すのです。

このアパッシメントは、4世紀にはすでにおこなわれていた方法で、西ゴート族の王のミサ用のワインとして使われていたとの記録が残っています。

アパッシメントにより、ブドウの全重量の35~45%が水分として蒸発するため、原材料に対しての生産量は、通常のワインより少なくなります。その希少性もワイン・ラヴァーを虜にしています。

ブドウの糖度が高いため、アルコール度数も14度以上と高くなります。さらに、最低2年間の樽熟成を経て、複雑なアロマのあるワインとなります。

そんな偉大なアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラですが、DOCG(統制保証原産地呼称)に昇格したのは比較的最近で、2010年のこと。意外と歴史の浅いワインなのです。

ヴァルポリチェッラのテロワールと味わい

ヴァルポリチェッラ地域の西側には、イタリアで最も大きな湖、ガルダ湖が広がっています。湖の影響を受けた温暖な気候と、石灰質の土壌、丘陵地帯である地形が、ヴァルポリチェッラ産ワインの味わいを特有なものにしています。ブドウには凝縮した糖とほどよい酸が生まれ、そこからできるワインは濃厚で、果実とスパイスのアロマが交差する複雑味のある味わいとなります。20~30年はゆうに熟成することができる長熟のワインです。

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラに合う料理

凝縮感のあるアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラに合う料理は、なんといっても牛肉の煮込みです。ジビエの煮込みも最高です。濃厚な料理を合わせることで、ワインも料理もさらに味わい深くなります。熟成したハードチーズもペアリングの定番です。

ワインだけで飲んでもおいしいですが、料理を楽しみながら、ゆっくりと味わいたいワイン。穏やかなディナーにぴったりの優雅なワインです。

おすすめのアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ

アレグリーニ / アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ

アレグリーニ アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ [2019] 750ml・赤

アレグリーニは、16世紀からヴァルポリチェッラの地でワイン造りをおこなっている家族経営のワイナリーです。歴史あるアレグリーニの醸造技術は、ヴァルポリチェッラのワインの向上に大きく貢献しました。100ヘクタールにおよぶ自社畑から、ヴァルポリチェッラのテロワールを表現した品質の高いワインを造っています。

アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラの最高峰の造り手としても知られ、『ワインスペクテイター』では、常に90点以上を獲得しています。『ガンベロ・ロッソ』では、トレ・ビッキエーレの常連で、2016年には「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。また、イタリアワインガイド6誌の評価をまとめた『ジェントルマン』の2021年ランキングで、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ2016年ヴィンテージが6位に入りました。

このアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコは、ドライのチェリー、ブルーベリー、プラムなどの果実の香り、ハーブやスパイス、バニラやチョコレートなどの芳香があふれ、非常に華やかで複雑なアロマがあります。ビロードのようなタンニンとふくよかなボディ、甘美な味わいが口の中に広がり、長く余韻が続きます。

ベルターニ / アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ

ベルターニ アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ 750ml・赤 限定品

ベルターニは、1857年、ベルターニ兄弟によって設立されたヴェローナ地区のワイナリーです。この地の自然と伝統を尊重し、丁寧にワイン造りをおこなっています。アパッシメントは、除湿などをおこなわず、完全に自然乾燥でおこなわれます。その後の発酵は、50日間におよび、セメントタンクでおこなわれます。

このアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコは、法定熟成期間である2年をはるかに上回る6年間の熟成がおこなわれます。樽は、60HLのスロヴォニアンオーク。その後、1年間瓶熟成を経てリリースされる、非常に手間暇かかったアマローネです。

プラムやチェリーなどの果実の香りに続き、ドライフルーツ、紅茶の葉、リコリスやスパイスのアロマが入り混じる芳香が広がります。果実味あふれる味わいの中に、樽由来のバニラのニュアンスがあります。タンニンと酸味のバランスがすばらしい妖艶な味わいです。

ベルターニ / アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・ヴァルパンテーナ

ベルターニ アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ ヴァルパンテーナ 750ml・赤

同じくベルターニが造るこのアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・ヴァルパンテーナは、熟成期間が2年のもの。スロヴォニアンオークとバリックを使用し、よりモダンな味わいに仕上がったアマローネです。ブラックベリーやチェリーの果実の香り、スパイス香が華やかに薫り、まろやかでエレガントな味わい。

まとめ

世界広しといえども、陰干ししてから発酵させる赤ワインは大変めずらしく、それがアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラの最大の魅力です。ヴァルポリチェッラの丘陵を吹き抜ける風を感じながら、ゆっくりとアマローネを味わってみてください。風とともに幸せを運んできてくれそうなワインです。

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