イタリアワイン評価誌の中で特に影響力のある『ガンベロ・ロッソ』、『ヴィタエ』、『ヴェロネッリ』、『ビベンダ』、『ドクターワイン』、『ルカ・マローニ』。これら6誌の評価をまとめて、総合得点をつける『ジェントルマン』誌の2021年赤ワイントップ100が発表されました。堂々たる1位に輝いたのは、「サッシカイア2017年」です!
テヌータ サン グイード サッシカイア [2017] 750ml 赤
サッシカイアとは
サッシカイアとは、テヌータ・サン・グイドが造る、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインです。「元祖スーパータスカン」とも呼ばれるサッシカイア。名前だけは知っているけど、歴史やテロワールは知らないというかたのために、まずはサッシカイアをご紹介します。
サッシカイアのテロワール ボルゲリ
サッシカイアが造られるのは、イタリア、トスカーナ州マレンマ地方のボルゲリ地区。トスカーナの赤ワインといえば、キャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノが有名ですが、どちらもトスカーナの内陸に位置します。それに対し、ボルゲリは、トスカーナの海岸沿いにあります。そのため、ボルゲリは地中海性気候の影響が強く、日中は暖かく、夜は気温が下がります。この昼夜の温度差のおかげで、ブドウは、酸をそなえつつも凝縮した果実になるのです。また、降水量が少ないため、ブドウの不作の原因も軽減されます。日照量も多く、キャンティ・クラシコやモンタルチーノより収穫時期も早くなります。
ボルゲリは、かつて湿地帯だったところで、19世紀半ばにマラリア対策として大規模な干拓がおこなわれました。土壌は、砂質、石灰質、粘土質が入り混じり、海が近いためミネラル分も豊富です。
このボルゲリのテロワールが、キャンティ・クラシコやモンタルチーノとは異なったワインを生み出す要因となっています。
サッシカイアの歴史
サッシカイアの歴史は、名門インチーザ・デッラ・ロッケッタ家から始まります。ボルゲリ一帯を統治していたゲラルデスカ侯爵家の娘が、インチーザ・デッラ・ロッケッタ家に嫁ぎます。ゲラルデスカ家の広大な土地が、ワイン造りをしていたインチーザ・デッラ・ロッケッタ家に分与されます。マリオ・インチーザ・デッラ・ロッケッタ侯爵は、大のボルドーワイン好きで、1944年にボルドーのシャトー・ラフィットから送られてきたカベルネ・ソーヴィニヨン種の苗をテヌータ・サン・グイドの地に植えました。これがサッシカイアの始まりです。
サッシカイアの名は、サッシ(石の意)に由来します。水はけのよいボルゲリの地質は、ボルドーの地質と似ているので、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に最適な場所だったのです。
サッシカイアは、当初は自家用ワインとして造られていました。その後、マリオの息子のニコロの代になり、天才醸造家ジャコモ・タキスが迎え入れられ、1968年、サッシカイアは世に売り出されたのです。当時、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインは、DOCG、DOCの原産地呼称を名乗ることができなかったため、テーブルワインの呼称としてリリースされました。原産地呼称でないにもかかわらず、卓越した品質のサッシカイアは、世界を驚かせ、その評判は瞬く間に広がって、「スーパータスカン」という呼び名がつきました。「原産地呼称にとらわれず、品質を追究した、すばらしいトスカーナワイン」を意味するスーパータスカンは、1980年代に世界的ブームになります。サッシカイアに続き、スーパータスカンを造る生産者が次々と現れました。
1994年には、「ボルゲリ・サッシカイアDOC」という原産地呼称が誕生しました。単独のワインが、DOCになるという唯一のケースで、サッシカイアはワインの歴史を変えたといえるでしょう。
サッシカイアの味わい
サッシカイアは、カベルネ・ソーヴィニヨン主体で、カベルネ・フランがブレンドされます。濃い色調で、カベルネ・ソーヴィニヨン特有のしっかりとした果実味とタンニンが感じられます。ボルドーの赤ワインのようでもありながら、トスカーナの明るさを感じさせる優雅な味わい。ボルゲリの地形に起因するミクロ・クリマ(微気候)、そしてボルゲリのテロワールが「トスカーナらしい」ワインを生み出すのです。バランスのよい酸味、ミネラル感、パワフルさがあり、非常にエレガントで壮麗なワインです。
リリース直後からもおいしく飲むことができますが、長期熟成するとさらにポテンシャルを発揮するワインとしても知られています。
サッシカイア2017年ヴィンテージ
- サッシカイア2017年
- カベルネ・ソーヴィニヨン85%、カベルネ・フラン15%
『ジェントルマン』誌1位に輝いたサッシカイアの2017年ヴィンテージ。2017年は、暑く乾燥した年でした。3月からすでに例年の平均気温を上回っていて、開花期、結実期も順調に推移し、小粒で房も小さくなりました。したがって、収量が18~20%減少し、高品質なブドウができたのです。生長は、途切れることなく、ストレスもかからず、常に順調でした。7月末まで雨が少なく、暑い日が続きました。8月中旬に雨が2~3日降ったことで、気温が若干下がり、ブドウが完熟する理想的な条件となりました。8月中旬から9月末にかけての昼夜の温度差が、美しい酸を作り出しました。
例年より8日ほど早い8月30日にカベルネ・フランの収穫が始まり、続いてカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫(すべて手摘み)。収穫は、標高の低い畑からおこなわれ、9月末~10月初旬に標高360メートルの丘にある畑の収穫となりました。
アルコール発酵はステンレスタンクにて28~30度でおこなわれ、醸し期間はカベルネ・フランが11~12日、カベルネ・ソーヴィニヨンが13~14日間。アルコール発酵の間、ルモンタージュとデレスタージュを繰り返しおこなうことで、優美さ、骨格のあるストラクチャー、芳香が生みだされます。
続くマロラクティック発酵はステンレスタンクで11月末まで、その後、フレンチオークで24か月熟成(3分の1が新樽)、瓶詰めの1か月半前にブレンドされました。
香りは、ブルーベリーやクロスグリのような黒いベリー系の果実が広がり、野生のハーブ、森の下草のニュアンスがあります。続いてカカオやバニラ、タバコのようなスパイス香、ドライフルーツの香りも感じられます。香りが何層にも重なり、深みがあります。味わってみると、凝縮感、ミネラル感のバランスが取れています。タンニンはシルキー。力強くありながら、優美でエレガントな味わいです。そして、口の中でリッチな余韻が続きます。
サッシカイア2017年ヴィンテージの世界の評価
イタリアワイン評価誌トータルトップとなったサッシカイア2017年ヴィンテージ。世界的にも、高得点が付けられました。
- サッシカイア2017年ヴィンテージ評価
- ジェームス・サックリング 96点
- ワイン・スペクテイター 95点
- ワイン・アドヴォケイト(ロバート・パーカー) 94点
サッシカイアの当たり年
サッシカイアのバックヴィンテージで、当たり年とされているのは、以下です。
- サッシカイアの当たり年
- 2016、2009、2007、2006、2004、2003、2001
- 1999、1998、1996、1995、1990
- 1988、1985、1982
- 1978、1975
2017年ヴィンテージは、若いうちからも楽しめる味わいです。また、数十年の長期熟成によってポテンシャルが引き出されるストラクチャーもあります。
イタリアワインは、バックヴィンテージがなかなか出回らないため、2017年ヴィンテージは入手困難、価格高騰にならないうちに、ゲットしておきたいヴィンテージです。