フランスワインが売れない? 輸出減少・余剰在庫・生産者が直面する危機

フランスワインが売れない? 輸出減少・余剰在庫・生産者が直面する危機

全4部連載・第2部|フランスワイン産業編

こんにちは、ワインネーション編集部です!

前回の第1部では、フランスの政治・経済の混乱――大規模デモ、財政赤字、政府債務の実態――を解説しました(まだの方は第1部からどうぞ)。今回はその舞台裏であるフランスワイン産業そのものが向き合っている現状です。

結論からいえば、いまフランスワインをめぐっては、「売れない」「余っている」「作る量が減る」という3つのニュースが同時に流れています。矛盾して見えますが、実はつじつまは合うんです。順番に、やさしく解きほぐしていきましょう。

※データは2026年10月26日時点で確認できる統計・報道に基づきます。速報値と確定値、事実と予測は区別して記載しています。

まず世界から。ワインは「世界的に」売れにくくなっています

OIV(国際ブドウ・ワイン機構)によると、世界のワイン消費量は2025年に208百万hl(ヘクトリットル)。前年より2.7%減で、2018年からは約14%も減っています。208百万hlは約208億リットル。たとえるなら東京ドーム約17杯分です(編集部計算)。それだけの量が世界で飲まれているのに、減り続けている――というのがいまの状況です(出典:OIV「State of the World Wine Sector in 2025」、2026年5月12日発表。2018年の数値は同報告の記述から編集部が換算)。

背景には2つの流れがあります。1つは物価高による節約ムード。もう1つは若い世代のワイン離れです。健康的な暮らしを大切にする志向やノンアルコール飲料の普及もあり、「ワインは毎日のもの」から「特別な日のもの」へと、静かに変化してきています。とくに消費の減少が大きいのは、中国・フランス・アメリカという3つの大きな市場です。一方で、日本は堅調に消費を保っている数少ない市場のひとつとされています(OIV、同上)。

世界のワイン消費量の推移グラフ(2018年・2024年・2025年の比較、2018年から約14%減)
グラフ3:世界のワイン消費量の推移|出典:OIV「State of the World Wine Sector in 2025」(2026年5月12日発表)、2018年は同報告の記述から編集部が換算

フランスワインの輸出、数字で見ると

世界の消費が減るなか、フランスワインの輸出も減っています。まずワインとスピリッツ(ブランデーなど)を合わせた数字から。輸出業者団体FEVSの集計では、2025年の輸出は数量3%減(1億6,800万ケース)・金額8%減(143億ユーロ)と、少なくとも25年ぶりの低水準に。フランスの輸出産業としての順位も、かつての2位から3位に下がりました(出典:FEVS集計を伝えるReuters 2026年2月10日報道)。

ではワイン単体はどうか。OIVの集計では、2025年のフランスワイン輸出は数量12.5百万hl(前年比2.3%減)・金額112億ユーロ(同3.7%減)です。それでもフランスは、ワインの輸出金額では世界一。輸出量でも世界3位を保っています(OIV、同上)。

ここで押さえたいのが、「数量」と「金額」の違いです。数量は「売れた本数」、金額は「売上」のこと。今回は数量より金額の下がり方が大きく、「安めのワインが売れ、高級品の伸びが鈍い」という傾向を映しています。相手先を見ると、最大の輸出先アメリカは金額19%減、中国は数量32%減と、2つの大きな市場が同時に減少。一方でイギリスは数量3%増と、欧州内は比較的持ちこたえています(OIV・FEVS、同上)。

表1:フランスワイン輸出の主な数字(2025年)

項目 数字 出典
ワイン単体・数量 12.5百万hl(-2.3%) OIV
ワイン単体・金額 112億ユーロ(-3.7%) OIV
ワイン+スピリッツ・数量 1億6,800万ケース(-3%) FEVS(Reuters報道)
ワイン+スピリッツ・金額 143億ユーロ(-8%) FEVS(Reuters報道)
アメリカ向け(ワイン) 金額-19% OIV
中国向け(ワイン) 数量-32% OIV
フランスワイン輸出の数量と金額の比較グラフ(2024年と2025年)
グラフ4:フランスワイン輸出の数量・金額(2024年と2025年)|出典:OIV、2024年は同報告の前年比変化率から編集部が換算

フランスの食卓でも、ワインがそっと遠ざかっています

フランス国内も、静かに変わっています。OIVの集計に基づく報道によると、2025年にフランスで消費されたワインの量が、記録に残るかぎりで初めてビールを下回ったそうです。ワイン消費は22.0百万hlで、前年比3.2%減、過去5年平均より7.2%少ない水準です(出典:The Drinks Business 2026年5月、OIV同報告)。フランスといえばワイン、というイメージが強いだけに、驚きのある数字ではないでしょうか。

スーパーの売り場でも、赤・ロゼワインの売上は2025年1〜11月に直近3年平均より8%減。食卓の主役の座は、ゆっくりと、しかし確実に揺れています(出典:EU資料を伝えるVino Joy News 2026年4月7日報道)。

なぜ「余っている」のに「減産」?――いちばん大事なポイント

ここまで読むと、こう思ったかもしれません。「ワインが余っているのに、なぜ作る量は減らすの?」。実はここに、今回のテーマの核心があります。カギは、次の3つの指標の違いです。

  • 生産量=その年に作ったワインの量
  • 販売量=実際に売れた量
  • 在庫量=売れずにセラーに眠っている量

需要が減ると、売れる量が減り、売れなかった分が在庫としてたまっていきます。フランスでは4年分のヴィンテージが売れずに残っている生産者もいるほど。売れ行きが落ちたのに仕入れだけ続けたお店の倉庫と、よく似た状態です(出典:Wine Spectator 2026年報道)。

ワインの需要減少から在庫増加、減産・危機蒸留・抜根までの流れを示す図解
図解:需要減少と余剰在庫の関係|WineNation編集部による図解(OIV・FEVS・Agreste等のデータに基づく)

この「満杯のセラー」を軽くするために、3つの対応が進んでいます。

  • 危機蒸留:売れ残った赤・ロゼワインを工業用アルコールに生まれ変わらせる仕組み。消毒液や医薬品、エネルギーなどに使われます。EUは2026年3月末の規則で4,000万ユーロの補助(1hlあたり33ユーロ)を支払い、最大120万hlの余剰ワインを市場から引き取ります(出典:Bloomberg 2026年4月1日・Vino Joy News同報道)。捨てるのではなく「別の形に生まれ変わらせる」のがポイントです。
  • 抜根(ばっこん):ブドウの木を引き抜き、畑そのものを減らす取り組み。フランス政府は1億3,000万ユーロの基金(2026〜27年)を発表し、EU資金1億2,000万ユーロと合わせて約2.7万ヘクタールの申請が承認。うち約半分はボルドーでした(Wine Spectator、同上)。
  • 気候:2026年夏の記録的な猛暑と干ばつが収穫を直撃。Agreste(フランス農業省)の予測では33.9百万hl(前年比6%減、過去5年平均より17%減)と、30年で最も低い水準の一つになると見込まれます(出典:Agreste INFOS RAPIDES 2026年9月号、2026年10月26日確認)。

つまり、「余っている」のは過去に作りすぎた分が今も残っているから、「減産」はこれ以上在庫を増やさないための調整に、気候による打撃が重なった結果。矛盾ではなく、市場が小さくなる過程の「表」と「裏」なのです。

そして、いちばん大変な思いをしているのは中小の生産者です。ボルドーのバルク(タンク売り)赤ワインの価格は2018年から3分の1に下がり、深刻な債務整理に入る生産者も報じられています。「売れない・安い・コストは上がる」の三重苦です。それでも彼らは、品質を守りながら畑と向き合い続けています。

まとめと次回予告|第3部「ボルドーは余り、ブルゴーニュは不足?」

第2部の要点は3つです。

  • 世界のワイン消費は208百万hl(2.7%減)と、1957年以来の低水準まで減り続けている
  • フランスワインの輸出は数量・金額ともに減少。それでも輸出金額は世界一
  • 「余っている」と「減産」は矛盾しない――在庫調整(危機蒸留・抜根)と気候の打撃が重なった結果

ただし、フランスワインの「苦しさ」は、産地によってまったく違います。ボルドーの生産量は前年比10%増の一方で過去5年平均より11%減。シャンパーニュでは収穫が約半分に。ブルゴーニュは? ロワールや南仏は?同じ「フランスワイン」でも、産地ごとに明暗が分かれるのです。

第3部では、ボルドー・ブルゴーニュ・シャンパーニュ・ロワール・南仏の5つの産地を、最新の生産量データで比べます。とくに注目は、「余剰」と「不足」が同時に語られるボルドーとブルゴーニュの対照です。

▶ 第3部はこちら(公開後にリンクが有効になります)

ワインの値段や味わいは、畑でブドウを育てる人々の日々から生まれています。世界で何が起きているかを知ることは、グラスの向こうの思いに思いを馳せることでもあります。第3部も、どうぞお楽しみに。🍷✨

この連載の過去記事

参考資料(2026年10月26日時点で確認)

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