こんにちは、ワインネーション編集部です!
2026年9月、ワイン業界に大きなニュースが飛び込んできました🍷✨
国際ブドウ・ワイン機構(OIV)が、セミヨン・グリ(Sémillon Gris)を正式に新品種として認定。そして南アフリカが原産国として指定されたのです。
世界最新のブドウ品種でありながら、実は数世紀前から存在していたという、なんとも逆説的な物語。今回は、この南アフリカ発の奇跡の品種を深く掘り下げていきます🍇
🌍 世界最新のブドウ品種「セミヨン・グリ」とは?
南アフリカが誇る2つ目のオリジナル品種
南アフリカには、現在2つのオリジナル品種があります:
- ピノタージュ:ピノ・ノワールとサンソーの交配種(1925年、意図的に創出)
- セミヨン・グリ:セミヨンの自然突然変異種(自然発生)
ピノタージュが「人間が創り出した品種」であるのに対し、セミヨン・グリは自然が創り出した品種。この違いが、この品種を特別なものにしているのです。
セミヨン・グリの正体
セミヨン・グリは、白ブドウ品種「セミヨン」の桃色の皮を持つ自然突然変異種です。
- 親品種:セミヨン(Sémillon)
- 特徴:桃色〜灰色(グリ)の果皮
- 分布:主に南アフリカ、オーストラリア・カリフォルニア・ボルドーにも存在の可能性(未登録)
- 突然変異:ウイルスではなく、自然発生
「ピノタージュは南アフリカで創られました。それは素晴らしいこと。でもセミヨン・グリは自らを創り出したのです。ただ起こったのです」──アンドレア・マリヌー
📜 セミヨン・グリの歴史──南アフリカのワイン史そのもの
1650年代:南アフリカ到着
セミヨンは、南アフリカのワイン造りの歴史の最初期から存在していました。
オランダ東インド会社の創設者ヤン・ファン・リーベックが1650年代に持ち込んだと考えられており、当時は単にグルーンドルイフ(groendruif = 緑ブドウ)と呼ばれていました。
1822年:全盛期──93%のシェア
1822年には、南アフリカのブドウ畑の93%がセミヨンで占められていました!
- 1795年:約100万本
- 1822年:約2,200万本
白(blanc)とグリ(gris)の両方が普通に栽培されており、当初は明確に区別されていませんでした。2つは混植され、一緒に収穫され、一緒に圧搾されていたのです。
中には「ローイ・グルーンドルイフ(rooi groendruif = 赤い緑ブドウ)」──つまりセミヨン・グリ──の方が、白よりも多く栽培されていた可能性を示す証拠もあります。
フィロキセラ後:衰退
しかし、フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の到来とともに、グルーンドルイフは姿を消していきます。
1979年には、セミヨンは全国のブドウ畑のわずか3.4%にまで減少。セミヨン・グリは、言及すらされなくなりました。
現在:復活の兆し
現在、南アフリカには約873.74haのセミヨン(グリを含む)が存在します。
2027年からは、セミヨン・グリが独立した品種として報告されるようになります🍇
💡 生存者たち──古樹に隠された宝石
それでも、セミヨン・グリは生き延びました。古い白ブドウ畑の中に隠された宝石として。
有名な古樹畑
- エーベン・サディーの「'T Voetpad」(北スワルトランド):1887年植樹、南アフリカ最古の接ぎ木なしフィールドブレンド畑
- ラ・コリーヌ(フランシュフック):1936年植樹
- リケティ・ブリッジ(フランシュフック):1905年植樹
- エイケホフ(フランシュフック):1902年植樹
こうした古樹の中での生存が、「グリは古樹でしか発生しない」という神話を生みました。
しかし2013年、ヴィティカルチュリスト(栽培家)のフランツィスカ・ウィケンズが、ローイグルーン(rooi groen)から増殖した新しい畑を植樹することで、この理論が誤りであることを証明しました🍇
👩🌾 アンドレア&クリス・マリヌー夫妻──14年間の闘い
きっかけ:ケープ・ワインメーカーズ・ギルド
2012年、アンドレア・マリヌーがケープ・ワインメーカーズ・ギルド(CWG)に参加したとき、ある仲間のワインメーカーが提案しました:
「CWGオークション用に、もっと大きくて樽香の強いシラーを造ったらどうか?」
しかしアンドレアは答えました:
「それは私らしくない。私はもっとオタクなんです」
そして彼女は思いついたのです──セミヨン・グリを。
2012年:プロジェクト始動
セミヨン・グリは1800年代から南アフリカに記録されていました。アンドレアは思いました:
「これは重要だ。どうやってこのブドウを見つけられるだろう?」
オールド・ヴァイン・プロジェクトを通じて、彼女は1960年に植樹されたパールデベルフの畑を発見。これが、後に「ザ・グリス(The Gris)」というワインになります。
2012〜2022年:認証への長い道のり
アンドレアとクリスは、この歴史的なケープ品種の正式認定を求めて14年間活動しました。
- 2012年:1960年パールデベルフ畑から挿し木採取
- イン・ヴィトロ温熱療法で病原体を除去
- 増殖、評価、認証
- 2022年:ラウンドストーン農園にマザーブロック(母樹園)完成
これにより、健康で認証されたセミヨン・グリの苗木が世界中の栽培者に提供できるようになりました🌱
困難な道のり──マニュアルは存在しなかった
輸入ブドウには確立された検疫プロセスがありますが、セミヨン・グリは南アフリカ原産。マリヌー夫妻は事実上ゼロからスタートし、農業省とワイン・スピリッツ委員会が並行してプロトコルを開発していきました。
「マニュアルは存在しませんでした」──アンドレア・マリヌー
🔬 謎の品種──なぜ突然変異が起きたのか?
誰も、何が突然変異を引き起こしたのかを知りません。
ステレンボッシュ大学の研究チームは、挿し木にストレステストを実施し、土壌pH、紫外線、温度を操作し、遺伝子マーカーを探しています。
すでに明らかになったこと
- ウイルスが原因ではない:ウイルスフリーの樹が最も濃い色の果実を生む
- 一方向の突然変異:セミヨン・グリは増殖してもブラン(白)に戻らない
- 古樹である必要はない:若い樹でもグリを生む
一つの仮説:「日焼け止め」理論
ある理論では、グリはセミヨンのための「日焼け止め」の一種ではないかと考えられています。
セミヨンはもともと、はるかに涼しい気候のボルドー原産。南アフリカの強い日差しから身を守るために、桃色の皮を発達させたのかもしれません☀️
🍷 セミヨン・グリの味わい──土壌が生む違い
アンドレア・マリヌーは、ラウンドストーンの片岩(シスト)土壌とパールデベルフの花崗岩由来土壌の違いを指摘します:
「片岩では、品質とともにすぐにスタートダッシュできます。花崗岩土壌ははるかに確立しやすいですが、同じレベルのキャラクターを得るにはもう少し待つ必要があります」
テイスティングノート
デカンター誌の記事では、2018年と2024年の「ザ・グリス」、2025年のラウンドストーン・セミヨン・グリ、そして対照として2025年のリュー・パサン・セミヨン(ブラン)が試飲されました。
料理はバターたっぷりのキングクリップ(深海魚)。その大きくて固い身は、グリワインとの相性抜群だったそうです🐟
✨ まとめ──「ただ起こった」奇跡
数世紀にわたり、セミヨン・グリは南アフリカのブドウ畑の中で隠れて存在してきました。
2026年、ついに正式な認定を受け、独自の「身分証明書」を手に入れました🍷✨
アンドレア・マリヌーが言うように、南アフリカとの結びつきは並外れて深いのです:
「ピノタージュはここで創られました。それは素晴らしいこと。でもセミヨン・グリは自らを創り出したのです。ただ起こったのです」
今後、世界中の栽培者が健康な認証済みセミヨン・グリの苗木にアクセスできるようになります。
日本でも、いつかこの南アフリカ発の奇跡の品種に出会えることを楽しみにしています🍇
🌍 セミヨン・グリ、これからの展開
現時点では、ラウンドストーンのマザーブロックからの生産量は小規模にとどまります。果実は農園の白ブレンド「ラウンドストーン・ブラン」、およびCWG用の単一品種ワインに使用されます。
しかし、2027年からセミヨン・グリが独立した品種として報告されるようになれば、世界中での栽培が広がるかもしれません。
南アフリカワインの新しい章が、今、始まろうとしています🍷✨