第2回で紹介するのは、「シャトー・ラトゥール」。
ブルゴーニュから世界中に名前を轟かせる、言わずと知れた名門シャトーです。
ワインラバーであれば、たいてい名前くらいだけでも聞いたことがあるでしょう。
シャトー・ラトゥールが有名になった背景には、やはりそれだけの理由と裏付けがありました。
本記事ではシャトー・ラトゥールの特徴や歴史、製法などについて詳しく解説しています。
シャトー・ラトゥールとは? 特徴を解説
<ラトゥール基本情報>
産地 | フランス・ボルドー・メドックボイヤック |
品種 | カヴェルネ・ソーヴィニヨンが主体 |
ボディ | フルボディ |
オーナー | フランソワ・ピノー |
価格 | 80,000円~900,000円 |
甘辛 | 辛口 |
「シャトー・ラトゥール」は、5大シャトーの一角を占める名門中の名門です。
5大シャトーの中でもっとも濃厚で芳醇なワインを作り出し、世界中の赤ワインラバーが魅了されています。
ちなみに「ラトゥール」とは、フランス語で「塔」という意味。
これはシャトー・ラトゥールのエチケットとして、広く親しまれています。
タンニンが豊富なため、熟成に向いているのが特徴です。
なんと条件が揃えば50年以上は熟成できるという、きわめて長寿なワイン。
長きにわたって熟成されたラトゥールには、ロマネコンティなどと比較して遜色ない値段が付けられるようです。
中には900,000円近い値段が付けられるケースも。
ちなみにシャトー・ラトゥールのワインには、「ランク付け」が存在します。
頂点に君臨するのは「グランヴァン」というフレーズを冠したもの。
グランヴァンには、樹齢10年以上のぶどうしか使われません。
さらにグランヴァンの品質基準を満たしていないと、グランヴァンという名前は与えられません。
グランヴァンの基準を満たさなかった場合は、
- レ・フォール・ド・ラトゥール
- ル・ポイヤック・ド・ラトゥール
という名前が与えられます。
このように表現すると、「グランヴァンじゃないなら、大したことがなさそうだ」と感じるかもしれません。
しかしグランヴァンでなくとも、両方ともきわめてハイレベルな赤ワインです。
製法もほとんど変わらないので、シャトー・ラトゥールの特徴をしっかりと持ち合わせています。
ラトゥールについて、世界最高のソムリエであるヒュー・ジョンソンは、「不滅の存在」である」というニュアンスで賞賛しました。
また辛辣な感想を述べることで有名なロバート・パーカーからも、あらゆる面で絶賛されています。
シャトー・ラトゥールの味はどんなもの?
シャトー・ラトゥールの味わいは、一言で言えば「世界最高峰の赤ワイン」です。
5大シャトーの中でもっともパワフルかつ重厚な味わいを持っており、とにかく男性的。
圧倒的なタンニンの存在感、弾け飛ぶような果実味と、ずっしりとした喉ごし。
繊細さと雄大さが共存したフレーバーは、一度嗅いだら忘れられません。
ヒュー・ジョンソンの言葉を借りれば「世界でもっとも凝縮された、豊かなフルボディ」。
ソムリエでなければ表現できない複雑な要素が重なり合い、圧倒的な奥深さを有しています。
熟成すると、さらなる次元へと進化することでも有名です。
カドがない丸いテイストへ変化し、パワフルながら上品、そして贅沢な一面を見せるようになります。
また5大シャトーの中では、「ヴィンテージに左右されず、味(品質)には安定感がある」と評価されています。
特に「不作年」というものが少なく、毎年一定以上のハードルをクリアし続けている傾向です。
後述するようにシャトー・ラトゥールの生産環境はきわめて恵まれており、そうそう「外れ年」にはなりません。
また徹底した品質管理や熟練した製法も、シャトー・ラトゥールの安定感を高めていると言えるでしょう。
ラトゥールの歴史をさかのぼる
シャトー・ラトゥールは、16世紀までさかのぼります。
哲学者モンテーニュが記した書物にて、ラトゥールは登場すでに登場していました。
17世紀後半、ワイン界の重鎮として知られる「セギュール家」が、シャトー・ラトゥール継承。
セギュール家の手によって、ラトゥールは大きく注目されるようになりました。
ごく限られた広さだったぶどう畑は、セギュール家の資本によって広く展開され、シャトー・ラトゥールは勢いづいていきます。
当時の米国首相だったトーマス・ジェファーソンは、ラトゥールを絶賛。
彼のコメントによって、ラトゥールは何倍もの価格で取引されるなどの出来事もありました。
1855年、とうとう「第一級シャトー」の栄誉を飾る(当時は4大シャトー)こととなります。
以後もラトゥールの名声は高まるばかり。
特に「ヴィンテージでの良悪がなく安定している」という点は、きわめて高い評価につながりました。
1963年、シャトー・ラトゥールはセギュール家管理下を離れます。
新しいオーナーは、イギリス系列「ピアソン・グループ」。
またシャトー・ラトゥールは、先鋭的な製法や手法を次々に取り入れることで知られています。
5大シャトーの中でもっとも早く近代化へと舵を切り、早い段階でステンレスタンクも導入。
また2000年には「ト・カロン・プロジェクト」という計画のもと、生産設備を大胆に改造しました。
新しい生産設備では、コンピューター制御にもとづく新時代の製法を形作られます。
これもシャトー・ラトゥールは、業界においてかなり早い段階で取り入れました。
もちろん栽培や醸造の技術も並行して向上し続けており、あらゆる面で5大シャトーの栄誉に恥じない体制です。
2012年には、品質の向上へ集中するために「プリムール(ワインの先物取引)」から撤退。
これはワイン業界から、おどろきを持って受け止められました。
2018年には、時代を先取って「ビオディナミ」へとシフトし始めます。
大規模なシャトーがビオディナミへ移行するのは難しい部分ありますが、このあたりはシャト・ラトゥールの柔軟性が現れていると言えるでしょう。
現在もシャトー・ラトゥールは、時代の先へと進み続けています。
5大シャトーという栄冠や古い考えに縛られず、常にチャレンジする姿勢が、シャトー・ラトゥールの本当の価値と言えるでしょう。
シャトー・ラトゥールの生産環境
シャトー・ラトゥールは、ボルドー最南端に位置します。
「ランクロ」と呼ばれる47ヘクタールの広大なぶどう畑にて、こだわり抜かれた方法でぶどうを栽培しています。
ランクロの土壌は、きわめて理想的な粘土質。
粘土質は、ぶどうに対して豊富な水分を供給し続けます。
先ほども触れたように、極端な不作になりづらい安定感のある土壌です。
近くには、ジロンド川が流れています。
ジロンド川まではわずか300mで、河川地形のメリットがダイレクトに受けられる位置関係です。
特に温度変化という点では、ジロンド川の存在は欠かせません。
霜害などを受けづらく、他が大打撃を受けている中で、「シャトー・ラトゥールだけは多少のことで済んだ」というケースも。
逆に300mは離しているということから、水害などのリスクはありません。
きわめて絶妙なポジションで、ランクロは展開されているのです。
先ほども触れたとおり、最新鋭の製法を積極的に取り入れる姿勢が目立ちます。
ビオディナミ農法やコンピュータ管理によって、生産環境はこれ以上ないものです。
さらに言えばシャトー・ラトゥールは、「グラヴィティ・フロー」を導入済み。
グラビティ・フローは、「できるだけダメージが発生しないように、可能な限り重力だけで、ぶどうとワインを動かす」という新しい生産体制のことです。
そしてシャトー・ラトゥールは、「樽に入っている段階で、ワインは評価できない」という考えを持っています。
よってシャトー・ラトゥールは、「飲み頃になるまでリリースを待つ」というスタンスを持っているのです。
というようにシャトー・ラトゥールの環境は、これ以上ない自然条件と次々に取り入れられる最新技術によって常に完璧な状態が保たれています。
シャトー・ラトゥールは、何年が当たり年?
シャトー・ラトゥールに、明確な「外れ年」はありません。
一方で「当たり年」は存在します。
安定感がある製法から毎年が当たり年のようなものですが、一般的には
1982年・1990年・1995年・2000年・2005年・2009年・2010年・2015年
などが、当たり年であると言われています。
これらは、安くても1本100,000円以上という高値で取引されています。
これらのヴィンテージは、名実ともに世界でもっともすぐれたものであると言えるでしょう。
そうそうに手を出せるものではありませんが、一度は飲んでみたいところです。
シャトー・ラトゥールは、安くても飲めるレアワイン
シャトー・ラトゥール・グランヴァンは、時にはとんでもない値段で取引されます。
安くても80,000円程度と、手を出すのは難しい価格帯です。
しかしセカンドにあたる「レ・フォール・ド・ラトゥール」なら、30,000円もあれば手に入れることが可能です。
グランヴァンの名前を称していなくても、製法はほとんど同じ。
いずれも5大シャトーとしての風情をはっきりと感じさせてくれるでしょう。
グランヴァンに手が届かなければ、上記のようなものから試してみましょう。
まとめ
5大シャトーの一角として君臨し続ける、シャトー・ラトゥール。
そして現在もその地位に満足することなく、新しい可能性を探り続けています。
その努力とラトゥールのポテンシャルを考えれば、高値が付くのもうなずけるでしょう。
いきなりグランヴァンを手に入れるのは、現実的ではないかもしれません。
しかしセカンド、あるいはサードのラトゥールなら、気軽に試せるはずです。