箱に入っているボックスワインを「安っぽくてなんだかおいしくなさそう」と思っていませんか?
実はそんなことはないのです!最近のボックスワインは品質が向上しただけでなく、多くのメリットがあります。
今回は、ボックスワインの魅力に迫ります。
ボックスワインとは
ボックスワインとは、ダンボールの箱の中に栓の付いている袋が入っており、その中にワインが入っているパッケージのワインのことです。ワインが箱に入っていることから「箱ワイン」、箱の中に袋が入っていることから「バッグ・イン・ボックス」とも呼ばれます。
ボックスワインは、1965年にオーストラリアで生まれました。当時は注ぎ口である栓が付いていない袋で、消費者が袋を切ってワインを注がなければならず、ワインの品質を保つことが難しいものでした。しかし、現在は、栓と袋が改良され、便利で実用的なものに進化しています。
ワインの容量は1.5リットルから20リットルで、日本では3リットルのものが主流です。
3リットルのボックスワインですと、750mlのワインボトル4本分ということになります。
ボックスワインの品質
ボックスワインは、ダンボールというビジュアル面と、安い価格設定の面から、「安かろう悪かろう」というイメージが以前にはありました。しかし、その汚名を払拭すべく、ワイン生産者が良質のワインにバッグ・イン・ボックスを採用し始めました。そのおかげで、現在ではボックスワインはデイリーの食事に合わせておいしく飲むことができ、ボトルワインと比べても遜色のない、あるいはより理にかなったワインとなっているのです。
ワイン大国であるフランスやイタリアでは、バック・イン・ボックスのワインもワイン法の原産地呼称AOP(仏)、DOC(伊)を使用できるようになり、ボックスワインの質は確実に上がっています。
ボックスワインのメリット
ボックスワインのメリット1 ~低価格~
ボックスワインのメリットは、なんといっても買い求めやすい価格にあります。
低価格におさえることができる最も大きな理由は、包装と輸送のコストにあります。
ワインの瓶詰めの工程は、瓶を洗い、乾燥させ、窒素を注入してワインを詰め、コルクをし、カプセルを付け、ラベルを貼るという大がかりなものです。これらの工程を省き、それより大幅に簡易な包装のバック・イン・ボックスにすることで、コストが削減できます。
また、ガラスの瓶は重くかさばるため、輸送コストが占める割合が非常に大きくなります。瓶は割れる可能性があるため、厳重に梱包されますので、さらに輸送コストがかさみます。
ボックスワインのパッケージは、ダンボール、袋、栓のみですから、軽く、かさばらず、割れることがありません。したがって、輸送コストが大幅に削減できるのです。
毎日飲むデイリー用の場合、格安のボトルワインを選ぶより、ボックスワインのほうが品質のよいワインが期待できるのです。
フランスやイタリアの家庭では、ボックスワインは大変重宝されています。毎日家族で消費するワインは家計の負担になりますので、ボックスワインは家庭の強い味方です。フランスの約25%の家庭は、ボックスワインを飲んでいるという統計があります(フランス地域圏行政庁農林部統計)。
ボックスワインのメリット2 ~好きなだけ飲める~
INRA(フランス国立農学研究所)によると、ボックスワインは開栓して約4週間~5週間はおいしく飲むことができます。また、開栓しない状態では、約1年保管できるとしています。
ボトルワインは、抜栓すると酸化が始まるため、デイリーワインの場合、2~3日で飲み切らなければなりません。一方、ボックスワインは、ワインが入った袋は真空状態になっているため、開栓後もワインはほとんど酸化しません。
おいしく飲むことができる期間が長いため、グラス1杯だけでも飲むことができます。「ワインを飲みたいけど、ボトルを開けるのは量が多い」というときにぴったりです。急な来客のときも「ワイン1杯どうですか?」と、ボトルを抜栓することなく1杯だけふるまうこともできます。
大人数集まるパーティーのときも役に立ちます。消費する分だけ注ぐことができるため、ボトルにワインが余ってしまった、ということもありません。
人数と飲む量によって調整ができ、いつでもおいしい状態で楽しむことができるのがボックスワインのメリットです。
ボックスワインのメリット3 ~エコ~
ボックスワインは、輸送時のコストが削減できるとお話ししました。つまり、輸送時の二酸化炭素排出量も少なくてすみ、エコだということがいえます。
また、飲み終わったあと、瓶に比べてかさばらず処理ができます。ダンボールと袋はリサイクル可能です。
サスティナビリティー(持続可能性)が注目されている現代、ボックスワインは時代の流れに合ったエコをもかなえてくれるというメリットがあります。
また、ボックスワインは業務用として広く普及しています。ハウスワインにボックスワインを使用しているレストランは多くあります。大量に消費されるハウスワインをボックスワインにすることは、環境にやさしいことなのです。
ボックスワインのメリット4 ~実用的~
ボックスの中に入っている袋は、クオリティーが向上し、ワインをよりよい状態で保存できるようになりました。外気を遮断し、突然の温度変化や光にも強い素材となっているのです。
そしてダンボールの箱が、衝撃や刃物から保護しています。箱には持ち手が付いていて、持ち運びやすく、積み重ねることもできます。このパッケージこそ実用的ですし、大変利便性が高いといえます。
家庭では省スペースにもなります。3リットルのサイズは収納もしやすく、冷蔵庫にそのまま入れることができます。複数のボトルで冷蔵庫が占領されてしまうということもありません。冷蔵庫に入れておけば、「冷やし忘れた!」ということもありません。
もっとも注目されているパッケージ
これだけメリットがあるボックスワインを利用しない手はありません。
フランス、イタリアでは、ここ10年でボックスワインの消費量が飛躍的に増加しています。ワイン全体の消費量は減少しているにもかかわらず、ボックスワインの消費量は増加しているのです。
イタリアの多数のソムリエは、バッグ・イン・ボックスをフレッシュなワインに最適なパッケージだといっています。
ボックスワインの消費は、家庭でも注目されていますが、特に飲食業界では欠かせないものとなっています。フランスのチェーンレストランでは、ワインの消費の60~75%はボックスワインとなっています(フランス地域圏行政庁農林部統計)。レストランでは、ハウスワインとして、グラスやカラフェでサービスされていますが、それは価格、量の調整、エコ、実用的とすべてのメリットの恩恵を受けることができるからです。
バック・イン・ボックスは、ワインだけでなく、ラムやウォッカなどのスピリッツやヴィンブルレにも広がっています。フルーツジュース用には、箱がなくても垂直に立っているバッグがすでに生まれています。
ダンボールは見ためが安っぽいという欠点をカバーするために、樽の形をした木のボックスも登場しています。
近年関心が高まっているビオ(有機栽培)のワインも、バッグ・イン・ボックスに適しています。酸化防止剤不使用の劣化しやすいワインも、フレッシュな状態で保管することができます。
まだ発展途上なのがスパークリングワインの場合です。ドイツではすでにスパークリングのボックスワインを製造しているところがあります。しかし、二酸化炭素が含まれているため、温度が高くなると袋が破裂してしまう可能性があります。将来スパークリングのボックスワインが普及するかどうかは未知数ですが、スティルワインにおいてはすでに注目度満点で、これからさらなる注目を浴びることは間違いないでしょう。