ワインを飲みたいけど、ワインってなんだか難しそう。そんなあなたのために、ワインのマナーについて詳しく解説します。ワインのマナーを知っておくと、ワインをより味わうことができ、料理もますますおいしいものになるでしょう。ぜひワインのマナーを覚えて、楽しい食事の時間を過ごしてください。
前回は、ワインの選びかたについて説明しました。ワインを選んだら、次はテイスティングをしなければなりません。第2回は、テイスティングについてお話しします。
ホストテイスティングとは
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レストランでワインを注文したら、テイスティングをするよう促されます。これを「ホストテイスティング」といいます。テイスティングのマナーがわからず、緊張してしまわないよう、テイスティングのしかたを覚えておきましょう。
なぜテイスティングをするのか
まず、知っておきたいのは、なぜテイスティングをしなければならないかということです。ホストテイスティングはレストランの儀式と思っているかたもいるかもしれませんが、きちんと理由があります。
ワインは、保存の仕方によっては劣化してしまう場合があります。ワインが正常かどうかを確認するためには、栓を抜かなければいけません。そのため、テイスティングが必要となります。ホストテイスティングは、ワインがおいしいかどうかを判断するものではなく、ワインの品質を確認するものです。
食事をするときは、ホストとゲストという概念があります。ホストは招待する側で、ゲストは招待される側です。つまり、ワインは、ホストがゲストにふるまうものになります。ワインが正常な状態で、ゲストに提供するにふさわしいかを確認するのがホストテイスティングです。
接待する立場だと、ゲストより先にワインを飲むなんてと気がひけるかもしれませんが、ゲストにふるまうのにふさわしいかの確認という意味があるとわかれば、納得されるでしょう。したがって、「私はワインがわからないので」とゲストにテイスティングをさせるのはマナー違反です。
ホストテイスティングは、カップルであれば男性が、家族や3人以上の場合は年長者がおこなうのがマナーです。ゲストとホストの立場がないような同年代の友人同士や同僚などの会食の場合は、レストランを予約した人やワインを注文した人がホストテイスティングおこなうのが一般的です。
ホストテイスティングのしかた
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では、どのようにテイスティングをすればいいのでしょうか。ホストテイスティングを順をおって解説します。
ワインの色と香り
まず、ラベルを見て注文したワインかどうかを確認します。
ソムリエがグラスに少しだけワインを注ぎますので、色味を確認しましょう。ワイングラスの脚(ステム)を持ち、グラスを少し傾けて色を見ます。濁っていないか、異物がないかをチェックします。ここで、万が一、小さなコルク片などが浮いていたら、「少しコルクが落ちたようです」とソムリエに小さな声で伝えましょう。
次に、鼻先にグラスを近づけて、軽く香りをかぎます。そして、グラスを2回くらい回して深く香りをかぎます。
ホストテイスティングの試飲
さて、いよいよワインを少し口に含んで、飲みます。
期待した味わいではない、好みの味わいではない、という理由でワインを交換することはできません。ホストテイスティングは、ワインが正常かを確認するもので、ワインがおいしいかおいしくないかを判断するものではないからです。ワインが正常ではなかった場合のみ、交換をすることができます。正常ではない状態としては、劣化とブショネ(コルク臭)があります。
劣化したワイン
30度以上の環境で長期間保存されたワインは、劣化することがあります。劣化すると、酸化したすっぱい香りと味わいになります。ただし、古いヴィンテージのワインは、酸化のニュアンスが多少あるワインもありますので、判断が難しいかもしれません。また、不快な焦げたようなにおい、蒸れたようなにおいは熱劣化によるにおいです。しかし、レストランであれば、ワインはワインセラーで保管されていますので、劣化をしていることはほとんどないといってよいでしょう。
ブショネとは
ブショネとは、コルクによる劣化のことです。コルクは天然の植物のため、細菌がひそんでいることがあります。消毒に用いられる塩素によってTCA(トリクロロアニソール)という物質が発生することが、ブショネの原因です。なお、ブショネのワインでも、体に害のあるものではありませんので、ブショネのワインをテイスティングしたからといって体調が悪くなるものではありませんので、安心してください。
ブショネのにおいを嗅いだことがないと、どのようなにおいかわかりにくいですが、かび臭いにおいや、湿ったダンボールのにおいがします。顔をしかめるほどのブショネから、わずかなブショネまであります。へんな味がするけど自信がないと思ったら、「確認していただけないでしょうか」と、ソムリエに伝えることはマナー違反ではありません。ブショネにあたる確率は5%ともいわれていますので、まれにブショネにあたってしまう可能性もあります。抜栓したらワインを注ぐ前に、ソムリエがコルクのにおいをかぎますので、その時点でブショネかどうかがわかる場合もあります。ブショネかブショネではないかをソムリエと言い争うのは、やめましょう。食事会の雰囲気を壊してしまうこともあります。自分ではへんな香りだと感じても、ワインがもつ独特な香りや味わいであることもあります。その場合は、ソムリエが丁寧にそのワインについて教えてくれますので、こころよく受け入れましょう。
ホストテイスティング完了
さて、ワインに異常がないことが確認できたら、「大丈夫です」「おいしいです」「けっこうです」といって「注いでください」とお願いしましょう。
ここで、ワインの香りや味わいのコメントをする必要はありません。
ホストテイスティングでリクエストできること
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ホストテイスティングの際に、ソムリエにお願いできることがあります。ホストテイスティングがうまくできるようになったら、次のようなプラスアルファも覚えておきましょう。
デキャンタージュ
高級な赤ワインをたのんだのに、香りもあまりなくて渋みが強いと感じた場合、デキャンタに入れるとおいしくなるかもしれません。ガラス容器のデキャンタにワインを入れることをデキャンタージュといい、それによって、ワインが空気に触れることになります。すると、ワインの香りがより感じられるようになり、味わいがまろやかになります。ただし、すべてのワインがデキャンタージュによっておいしくなるわけではありません。香りと味わいが開きすぎてしまうからという理由でデキャンタージュを嫌う人もいますので、「好みによると思いますが、デキャンタージュしたらおいしくなるでしょうか」とソムリエに相談してみましょう。
ワインの温度調整
夏の暑いときなど、ワインの温度をもう少し冷やして飲みたい場合、冷やしてもらうようお願いすることができます。
逆に、グラスに入れていれば温度が上がってくるため、温度を上げることをお願いする必要はありません。
まとめ
ホストテイスティングの際に、「けっうです。注いでください」とキリっといえるようになれば、あなたも立派なホストです。次回は、レストランでワインを飲むときのマナーについてお話しします。