「一度でいいから、レアで高級なワインを飲みたい」という思いは、すべてのワインラバーに共通した思いでしょう。
そしてワインラバーが「レアで高級だ!」と評価するワインのひとつに、シャンベルタン・グラン・クリュ」が存在します。
シャンベルタン・グラン・クリュは、数々の名作を送り出すブルゴーニュ地方において、「王様」とたたえられるほどの存在です。
古くから最高峰のワインとして名声をとどろかせ、今もブフランス方を牽引するワインです。
一流のワイン通が「黙ってうなずくしかない」ほどの高いクオリティを持っており、なんと「ナポレオンが愛飲した」、という史実まで紹介されています。
本記事ではシャンベルタン・グラン・クリュの魅力や歴史、その他ラインナップなどについて解説します。
シャンベルタン・グランクリュとは、どんなレアワイン?
シャンベルタン・グラン・クリュの基本情報
生産地 | フランス・ブルゴーニュ |
生産者 | ロシニョール・トラベ |
タイプ | 赤ワイン |
品種 | ピノ・ノワール100% |
価格 | 100,000~500,000円 |
シャンベルタン・グラン・クリュは、典型的な高級赤ワインです。
正式には「ジュヴレ・シャンベルタン」という銘柄を与えられていますが、便宜上「シャンベルタン・グラン・クリュ」と記載します。
冒頭でも述べたとおり「ブルゴーニュワインの王様」と呼ばれ、ワイン愛好家なら誰しもが憧れる存在です。
「グラン・クリュ」とは、「特級畑」という意味です。
実はブルゴーニュ地方では、「そのぶどう畑がいかに優れているか」というのを、ランク付けしています。
ランクは4段階あり、
- グラン・クリュ
- プルミエ・クリュ
- コミュナル
- レジョナル
というふうに分けられています。
グラン・クリュは、「フランスはおろか、世界でも珍しい最高のぶどう畑」だと評されています。
つまりシャンベルタン・グラン・クリュは、「最高のぶどう畑で育ったぶどうを使った赤ワインである」、というわけですね。
伝統ある製法や歴史もさることながら、シャンベルタン・グラン・クリュは、ぶどうの時点ですでに特別な存在なのです。
シャンベルタン・グラン・クリュの味わい
シャンベルタン・グラン・クリュの特徴は、やはり濃厚かつパワフルな味わい。
たっぷりと含まれたタンニンとミネラル、また「長い間熟成させられる」というのも、シャンベルタン・グラン・クリュの特徴。
シャンベルタン・グラン・クリュは、20年以上にわたって熟成することが可能です。
熟成させることによって、また違ったおもむきの表情を見せるようになります。
シャンベルタン・グラン・クリュが作られる「コート・ドール」
シャンベルタン・グラン・クリュは、ブルゴーニュ地方「コート・ドール」という地域で作られています。
コート・ドールは、ワインの聖地であるブルゴーニュ地方において、もっともすぐれた生産地のひとつです。
コート・ドールは、ブルゴーニュ地方でも最多となる9箇所のグラン・クリュが展開されています。
コート・ドールはたとえグラン・クリュでなくとも、「ワインを作るため」に整えられたとしか考えられないほど恵まれている環境にあります。
さまざまな銘柄のレアワインを、永きにわたって排出し続ける特別な場所です。
その中でもさらに選りすぐりの場所で、シャンベルタン・グラン・クリュに使われるピノ・ノワールが育てられています。
コート・ドールでは、標高300m程度の場所にグラン・クリュが広がります。
おそらくフランスの国土においてもっとも日照条件が整った場所です。
そしてコード・ドールは、夏と冬の寒暖差が大きい、いわゆる「半大陸性気候」。ぶどうたちはこの気候のもと、すこやかに育ちます。
もちろん、土壌にも恵まれています。
コート・ドールには頑強な石灰盤が広がっています。
よって土壌には石灰岩と酸化鉄が混ざり込んでいて、これはワインにとって最高の組み合わせ。
豊満なタンニンの味わいと、金属を思わせるアタック感、そして男性的なコクは、この土壌に影響されています。
シャンベルタン グランクリュの歴史
シャンベルタンの歴史は、なんと13世紀ごろまでさかのぼります。
13世紀ごろ、ある修道院が展開するぶどう畑のワインが、ちょっとしたブームになりました。
このぶどう畑は、のちの「クロ・ド・ベーズ」に位置します。
ブームを聞きつけた「ベルタン」という農業家は、修道院の畑のすぐとなり隣で似たようなワインを作り始めます。
当然ながら、隣で作ったからといって、ワイン作りがうまくいくはずもありません。
しかしベルタンは、あろうことか修道院の作るワインと同等なクオリティで、ワインを製造する方法を確立してしまったのです。
このワインは、「シャン・ド・ベルタン」(ベルタンの畑)と呼ばれるようになりました。
以後、発音しやすいように「シャンベルタン」という名前に変化していったようです。
時は流れて1812年、フランスとロシアの間で戦争が勃発しました(1812年ロシア戦役)。
当時フランス軍を率いてロシアへ攻め込んだのが、かの大英雄ナポレオン1世です。
ナポレオンはシャンベルタンが大好物で、なんとロシアへ攻め込むときも、シャンベルタンを持って行ったとのこと。
そしてナポレオンは、「シャンベルタンを知って以降は、別なワインには口をつけなかった」という衝撃的なエピソードも伝えられています。
とはいえ、あらゆるワインを手に入れられる立場にあったナポレオンが「他のものには口をつけない」というのは、少し不自然かもしれません。
また彼の出席するパーティーすべてで、シャンベルタンばかりが出てくるわけではないでしょう。
ただ、そんなエピソードが語られる時点で、少なくともナポレオンがシャンベルタンに傾倒していたことはうかがえるのではないでしょうか?
このことも手伝って、シャンベルタンは圧倒的な名声を得るようになりました。
そして1848年、「ジュヴレ・シャンベルタン」という新しい名前が与えられます。
ジュヴレとは、当時のシャンベルタン生産地の村名でした。
ジュヴレの首長が、「シャンベルタンに村の名前を入れることで、ブランディングしたい」ということで、現在の名前に落ち着いたそうです。
三重県のとある和牛を「松坂牛」と名付けるのと、似たような発想ですね。
結果としてフランスの片田舎に過ぎなかったジュヴレ村は、世界中でその名を知らしめることとなりました。
さまざまなシャンベルタン
シャンベルタンは現在、冒頭で紹介したグラン・クリュのほか、さまざまなラインナップを取り揃えています。
グラン・クリュは、優れたワインではあっても、価格のなかなか手に入れられないのが泣き所です。
しかし以下のようなシャンベルタンは、値段を控えつつもクオリティは抜群。
シャンベルタンの「らしさ」を味わえるでしょう。
ただしシャンベルタンは、「ドメーヌ」によっては品質が劣るものも存在します。
中には一般的なシャンベルタンに遠く及ばないものも。
シャンベルタンを選ぶときは、評価されていないドメーヌのものはチョイスしないのがオススメです。
ドメーヌ フーリエ/ジュヴレ シャンベルタン [2018]
シャンベルタン独特のパワフルな味わいと、タンニンたっぷりの旨味を持ち合わせた一本。
なぜこの安さで流通しているのか、ワインラバーでも首をひねるほどリーズナブルです。
熟成すれば、さらに味わい深く、豊満なテイストへと成長します。
ブシャール ペール エ フィス/ ジュヴレ シャンベルタン [2014]
「廉価版」シャンベルタンの中でも、非常に人気が高いプシャール。
鉄分やブラックチェリーの味わいが前面に出ていて、やはりシャンベルタンの気品を忘れてはいません。
値段も手頃のなので、試してみるにはちょうどよいでしょう。
ブシャール ペール エ フィス ジュヴレ シャンベルタン [2014] 赤 375ml ハーフボトル
シャンベルタンの当たり年はいつ?
シャンベルタンの当たり年は、一般的には以下のとおりです。
評価はもとより値段が高く、1,00,000円以上という値段で取引されることも。
なかなか庶民には手が出しづらい超レアワインではありますが、たとえグラス1杯でも飲んでみたいところです。
雨に打たれなかった2005年
2005年は天候に恵まれた1年で、あまり雨が降りませんでした。
また年間をとおして冷涼であり、ぶどうにとっては最高の環境が続いた一年です。
とてもナチュラルな味わいで、飲みやすく仕上がっているのが2005年のシャンベルタン。
シャンベルタンらしく仕上がった、2009年
比較的暖かく、やはり天候も味方をした1年間。
味・香りともバランスが整っており、「単純に出来がいい」といったところ。
もっともシャンベルタンらしい仕上がりになったと言えるでしょう。
雨に負けなかった2015年
2015年には、4月ごろに雨の日が続きました。
しかしぶどうは旨味と甘みを凝縮し、意外にも当たり年になっています。
とてもパワフルで、なおかつフレッシュな味わいが特徴です。
シャンベルタンに合う料理
シャンベルタンは典型的なワインであり、肉料理に対して好相性を発揮すると言われています。
特にシャンベルタン・グラン・クリュは硬い味がするので、ジビエ料理と組み合わせられることが多いようです。
そのほかいずれのラインナップも、ジビエ含む肉料理とよく組み合わせられます。
特に、ローストやステーキと合わせるのがおすすめ。
基本的に何のラインナップであっても、「赤ワインと合うもの」であればマリアージュを引き起こします。
まとめ:まずはシャンベルタン・ファミリーを味わおう
シャンベルタン・グラン・クリュは、世界でも最高峰と言われるほどレアで高級なワインです。
生産地・原材料となるぶどう・味わい……あらゆる点で一般的なワインとは格が違います。
稀代の英雄、ナポレオンが愛飲するのも、うなずけるのではないでしょうか?
現代のワインラバーも、ナポレオンと同じくシャンベルタン・グラン・クリュを味わうチャンスは与えられています。
とはいえ、「いますぐに買って飲もう」と思えるような値段設定ではないのも事実。
本記事で紹介したように、リーズナブルなシャンベルタン・ファミリーもあるので、まずはそれらから試してみるとよいでしょう。 たとえグラン・クリュでなくとも、感動的な味わいが楽しめるはずです。