ワイン好きなら誰もが愛してやまないシャンパーニュ。ワインについてあまり詳しくない方でもシャンパーニュという名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
日本では「シャンパン」の名前で定着していますが、正式名称はフランス語で「シャンパーニュ」と言います。発泡性のスパークリングワインのことを一括りに「シャンパン」と呼ぶ方も多いですが、実は「スパークリングワイン」と「シャンパーニュ」は全く別物なのです。
では、「スパークリングワイン」と「シャンパーニュ」の違いとは、一体何なのでしょうか?今回は知っているようで知らない、シャンパーニュの基礎知識をご紹介します。
シャンパーニュって何?
シャンパーニュ(champagne)とは、簡単に言うと「フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン」のことを指します。つまり、シャンパーニュ地方以外の地域で造られるスパークリングワインはシャンパーニュとは名乗れません。またフランスにはワイン法と呼ばれる法律があり、ブドウの品種や生産地域、製造方法など厳しい条件を満たしたワインのみ「シャンパーニュ」の名前を名乗ることができます。シャンパーニュ地方には5つの県があり、シャンパーニュはこの中の指定された地域のブドウのみを使って造られています。
シャンパーニュの主なブドウ品種

シャンパーニュに使用することが認められているブドウ品種は現在7種類ありますが、実際は下記の3品種が99%以上を占めおり、残りの4品種はほとんど使われていません。シャンパーニュは個性の異なるこの3つのブドウ品種をブレンドしたり、単一品種で使用することで、味わいに変化をつけています。
シャルドネ
シャルドネはコート・デ・ブラン地区で多く栽培されている白ブドウ品種です。シャルドネを多く使用したシャンパーニュは酸味がシャープで、繊細でエレガントな印象になります。
ピノ・ノワール
比較的日照量が多いモンターニュ・ド・ランス地区で多く造られている黒ブドウ品種です。果実味豊かで、力強くコクのあるタイプになります。
ムニエ
霧によって霜が多くなる河沿いにあるヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区に多く見られる黒ブドウ品種です。酸味は穏やかで、果実味豊かで熟成が早いのが特徴です。ワインに複雑さやリッチさを与えます。
畑の格付け
シャンパーニュの畑には村単位の格付けがあり、一番良いブドウが栽培される村を「グラン・クリュ(特級)」、それに続く村を「プルミエ・クリュ(一級)」、それと格付けなしの村に分かれています。しかし近年は格付けのない村の畑で取れたブドウから、優れた品質のシャンパーニュを造る生産者も沢山います。
シャンパーニュの造り方

シャンパーニュに使われているブドウは全て手摘みで収穫されています。収穫されたブドウから静かに果汁を絞り、ステンレスタンクもしくは木樽の中で10日~15日ほど一次発酵を行います。一次発酵を行う際は、畑・ブドウ品種・ブドウの樹齢などによって細かくタンクや樽を分けて行います。その後、「アッサンブラージュ(調合)」と呼ばれる重要な過程に進みます。
アッサンブラージュでは一次発酵を行ったワインを、畑や品種で分けたタンクや樽ごとにテイスティングし、それらのワインを混ぜ合わせることで味わいを決めていきます。このアッサンブラージュの割合によってワインの味わいのスタイルが決まるので、ここがシャンパーニュ造りの中でも非常に重要なプロセスになります。ノンヴィンテージワインの場合は、前年や数年前に醸造しておいた「リザーブワイン」と呼ばれるワインをアッサンブラージュに使います。
アッサンブラージュしたワインは、酵母と糖分が混ざった「リキュール・ド・ティラージュ」と呼ばれる液体を加えて瓶詰めされます。この時、瓶の中で酵母が糖分をアルコールと炭酸ガスに分解することで、泡なしのスティルワインが発泡性ワインへと変化します。この工程を瓶内二次発酵と呼びます。その後ノンヴィンテージのシャンパーニュは最低15か月、ヴィンテージ・シャンパーニュは最低3年間瓶内で熟成を行うことで、瓶内の酵母がワインにうまみを形成していきます。
それからワインボトルの瓶口を下に向けて、瓶内にたまった酵母の澱を少しずつ瓶口に集める「ルミアージュ(動瓶)」という作業を、約3か月かけてゆっくりと行っていきます。瓶口に澱が集まったら「デゴルジュマン(澱引き)」と呼ばれる作業を行い、瓶口にたまった澱を瓶内から取り除きます。
最後に、デゴルジュマンによって瓶内の液体が目減りした分を補うために、シャンパーニュの原液となったワインに糖分を加えたリキュールを添加し、コルクで打栓してシャンパーニュの完成です。
シャンパーニュの甘口・辛口

シャンパーニュの甘口・辛口のタイプは、シャンパーニュ造りの最後の工程で決まります。デゴルジュマン後にシャンパーニュの原液となったワインに糖分を加えたリキュールを添加することを「ドザージュ」と呼びますが、このドザージュの際に添加するリキュールの甘さ(糖分の量)によってシャンパーニュの甘辛度を調整するのです。シャンパーニュの甘辛度は、1?中の残留糖度によって下記のように表示されます。
・Doux(ドゥー):とても甘口…1リットルに糖分50g以上
・Deme-sec(ドゥミ・セック):甘口…1リットルに糖分33~50g
・Sec(セック):やや甘口…1リットルに糖分17~35g
・Extra sec(エクストラ・セック):やや辛口…1リットルに糖分12~20g
・Brut(ブリュット):辛口…1リットルに糖分15g以内
・Extra brut(エクストラ・ブリュット):超辛口…1リットルに糖分6g以内
・Brut nature(ブリュット・ナチュール):超辛口…1リットルに糖分3g以内
※Pas dose(パ・ドゼ)やDosage zero(ドザージュ・ゼロ)という呼び方もあります。
具体的な残留糖度の量を覚える必要はありませんが、甘辛度とその表示名を覚えておくとワイン選びの際に役立つので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
シャンパーニュのタイプの違い

シャンパーニュには様々なタイプがあります。シャンパーニュのタイプは、シャンパーニュの色、使用しているブドウの色、ワインのグレードの3つで分けることができます。
シャンパーニュの色
シャンパーニュには白とロゼの2種類のタイプがあります。ロゼワインを造るときに、赤ワインと白ワインをブレンドしてロゼを造る方法は、EUのワイン法で基本的には禁止されていますが、シャンパーニュのみ例外が認められています。(詳しくは「ワインをもっと楽しむ方法~味わいだけでなく、ワインの色にも注目してみよう!~」をご参照ください。)
ブドウの色
シャンパーニュのタイプは使用されているブドウの皮の色でも分けることができます。「Blanc de Blancs(ブラン・ド・ブラン)」は白ブドウのみを使って造られた白ワインを意味し、「Blanc de Noirs(ブラン・ド・ノワール)」は黒ブドウのみで造られた白ワインを意味しています。
シャンパーニュのグレード
シャンパーニュはワインのグレードでも分けることができます。
「ブリュット・ノンヴィンテージ・シャンパーニュ」はスタンダードなシャンパーニュで、瓶内で最低15か月の熟成が法律で義務付けられています。
「ヴィンテージ・シャンパーニュ」はその名前の通り、ヴィンテージ(収穫年)が記載されたシャンパーニュで、ブドウの出来の良い同一収穫年のブドウのみを使って造られます。瓶内で最低3年以上熟成した後の出荷が認められています。
「プレスティージュ・シャンパーニュ」は高品質のブドウのみを使って造られる最高品質のシャンパーニュです。ヴィンテージタイプとして造られることがほとんどですが、たまにノンヴィンテージのプレスティージュ・シャンパーニュを見かけることもあります。
シャンパーニュには味わいや色、グレードなどによって様々なタイプがあり、とても奥が深い飲み物です。まずはシャンパーニュの基本を知ることで、自分好みのシャンパーニュ選びを楽しんでみてくださいね。