こんにちは、ワインネーション編集部です!
「ブルゴーニュはちょっと敷居が高い…」そう感じている方にこそ知っていただきたい生産者がいます。今回ご紹介するのは、ブルゴーニュ最北端の村サン・ブリに本拠を置くドメーヌ・ベルサン(Domaine Bersan)。15世紀からの記録が残る古い家系に生まれ、2012年にはビオロジック認証を取得。さらに、11〜12世紀に建てられた地下セラーでワインを育てているという、歴史と自然が重なり合うドメーヌです。
今回は、その中からコート・ドーセールの白・赤を中心に3本を厳選しました。産地の個性、造り手の哲学、そして食卓での楽しみ方まで、じっくりご紹介します🍷
🍷 先に結論:ドメーヌ・ベルサンとは
- 産地:ブルゴーニュ最北端。サン・ブリ、シャブリ、イランシーに畑を所有
- 規模:合計22ha・6品種。家族経営のドメーヌ
- 栽培:2009年から完全ビオロジック、2012年に認証(ABマーク)取得
- セラー:11〜12世紀建造。エアコンなしで気温10〜13℃・湿度80%
- 味わい:冷涼テロワール由来のフレッシュな酸と、豊かなアロマ。力強さよりバランス型
ひと言でいえば、「北の冷涼さ」と「時間をかけた熟成」を、自然派の手法でまとめ上げたドメーヌです。派手さはありませんが、飲むほどに産地の輪郭が見えてくる、長く付き合いたくなるタイプのワインです。
ドメーヌ・ベルサンとは?15世紀から続くサン・ブリの名家
ドメーヌ・ベルサンは、ブルゴーニュ最北端の村サン・ブリ・ル・ヴィヌーに本拠を置く生産者です。ベルサン家は15世紀からの記録が残るほど古い家系で、何世代にもわたってこの村に暮らし、家族の伝統を継いできました。サン・ブリでも最も名の知られた生産者のひとつとされています。
1980年、当時の当主ルイ・ベルサンが事故で亡くなり、2人の息子ジャン・ルイとジャン・フランソワがドメーヌを継承しました。その後2009年、相続の関係でドメーヌは2つに分かれ、ジャン・ルイと息子のジャン・クリストフが現在のドメーヌ・ベルサンを引き継ぎます。いまはジャン・ルイの後を継いだジャン・クリストフが、栽培も醸造もドメーヌ運営の中心を担っています。
所有する畑はサン・ブリ、シャブリ、イランシーに合計22ha、栽培品種は6種類。決して巨大なドメーヌではありませんが、その分だけ畑一枚一枚に手が届く規模感です。丁寧な畑仕事と醸造から生まれるのは、フルーティーでフレッシュ、アロマ溢れるワイン。樽や果実味で押してくるのではなく、香りと酸で語るタイプのブルゴーニュといえます。
ブルゴーニュ最北端のテロワール——冷涼さが生む「絶妙なバランス」
ドメーヌの本拠地サン・ブリ・ル・ヴィヌーは、シャブリやオーセロワと並ぶブルゴーニュで最も北に位置するエリア。冷涼な気候と、石灰質と粘土質の土壌が、フレッシュでフルーティー、アロマ豊かなブドウを育てます。
涼しい土地では、ブドウがゆっくりと成熟します。糖度だけが先に上がることがないため、ミネラルを思わせる風味、果実味、ストラクチャー、深み、そして酸味が、どれも突出せずに重なる。これがベルサンのワインの「絶妙なバランス」の正体です。南の産地のような太陽の甘さを求める方には、少し違って見えるかもしれません。けれど、食卓で何皿も合わせられるのは、間違いなくこのタイプです。
🍇 コート・ドーセールとサン・ブリは、何が違う?
瓶に書かれた名前が似ていて分かりにくいので、ここで整理しておきます。
- ブルゴーニュ コート・ドーセール:オーセロワ地区の広域アペラシオン。白はシャルドネ、赤はピノ・ノワールから造られます
- サン・ブリ:村名アペラシオンで、白はソーヴィニヨン・ブラン100%。ブルゴーニュでソーヴィニヨン・ブランの村名AOCがあるのは、ここだけです
- イランシー:ピノ・ノワールを主体に、伝統品種セザールを少量ブレンドできる赤の産地。軽やかさと香りの複雑さが魅力です
ベルサンはこの3つの産地の畑を持っているので、同じ造り手の哲学で、品種と土地だけを変えて飲み比べることができる。これは地味ですが、ワイン理解を一気に深めてくれる贅沢です。
ビオロジックへの転換——「自然に振り回されるほど、表現力が増した」
ジャン・クリストフがワイン造りを学ぶうちに有機栽培に興味を覚え、2002年から手摘み収穫、殺虫剤の廃止、除草剤の廃止といった取り組みを少しずつ始めます。そして2009年から完全にビオロジックへ転換し、2012年に認証(ABマーク)を取得しました。
「自然に振り回されることが増えたが、ワインの表現力が増した」
——ジャン・クリストフ・ベルサン
この言葉が、このドメーヌの性格をよく表しています。ビオロジックは「何もしない」ことではなく、自然の反応を読みながら手を入れること。ベルサンが畑で行っているのは、まさにその積み重ねです。
- グリーンハーベストを一切行わない:収量は剪定と摘芽で調整。房を落として数を減らすのではなく、木そのものの力を整える考え方です
- 結実の直後に摘葉:葉を整理して風通しを良くし、病害を防ぎます
- 発酵はすべて天然酵母(野生酵母):畑とセラーに棲む酵母だけで発酵させます
- 丘陵に芝を植える:雨による土壌の流出を防ぎ、畑を守るためです
収穫はすべて手摘み。醸造では清澄をほとんど行わず、必要に応じて大きめのフィルターでろ過するのみ。素朴に聞こえるかもしれませんが、この「余計なことをしない」姿勢が、産地の個性をそのままグラスに届けてくれます。
11〜12世紀の地下セラーが、ワインを育てる
ベルサンの熟成を支えているのが、11〜12世紀に建てられたという地下セラーです。村人やテンプル騎士団の修道士たちによって造られた地下室と地下道で、分厚い壁に囲まれています。
興味深いのは、そこにエアコンなどの空調設備がないこと。それでも気温は10〜13℃、湿度は80%という、ワインの熟成・保存に理想的な環境が保たれています。温度が大きく動かないということは、ワインが急激に変化しないということ。ゆっくり熟成するからこそ、果実と酸とミネラルが溶け合っていきます。
村には古い建造物が多く残り、ドメーヌの目の前には大きな教会、その隣には18世紀に建てられた城もあります。サン・ブリ・ル・ヴィヌーは「絵のように美しいフランスの村」のひとつ。ワインを語る前に、まず村の風景を見ていただきたい理由がここにあります。最新設備で管理する醸造所も素晴らしいのですが、800年以上の時間がつくった環境にワインを預けるというのは、まったく別の贅沢です。
編集部厳選|ドメーヌ・ベルサン おすすめ3本
今回ご紹介するのは、いずれもコート・ドーセールの個性が分かりやすい3本。白2本、赤1本で、飲み比べもしやすい構成です。
① シャルドネ 2023|樽の厚みと北のフレッシュ感を両立した白
除梗せずに空圧式の圧搾機で圧搾し、228Lと600Lのフランス産オーク樽で発酵&10〜18ヶ月熟成(新樽約10%)。北の産地らしいフレッシュ感を残しながら、樽熟成による厚みと複雑味を加えた一本です。清澄は基本的に行わず、大きめのフィルターでろ過するのみ。「コート・ド・ボーヌを思わせる」と評される満足度の高い味わいで、ブルゴーニュ白の入門にも、普段使いにも寄り添ってくれます。
② ルージュ キュヴェ ルイ ベルサン 2022|骨格のある赤
20〜30%の全房を使用して発酵させ、228Lのフランス産オーク樽(新樽20〜30%)で12〜18ヶ月熟成。果実味が豊かで、凝縮感と骨格をあわせ持つキュヴェです。全房由来の香りの広がりと、テロワールの特徴がよく出た満足度の高い一本。鴨や牛肉など、しっかりした料理とも渡り合えます。
③ ブラン キュヴェ ルイ ベルサン 2020|ステンレスタンクだけで造る、果実本来の白
除梗せずに空圧式で圧搾し、50hlのステンレスタンクで発酵、8〜12ヶ月熟成。樽を使わないことで、果実本来の味わいがストレートに現れます。フレッシュ感と豊かな果実味が調和し、余韻にミネラル感を感じる味わい。オーセロワの個性をじっくり楽しめる、生産者と産地に注目したい方におすすめの一本です。
🍽 ペアリング提案——冷涼産の酸は、和食にもよく合う
- シャルドネ:白身魚のソテー、鶏肉のクリーム煮、ホタテのカルパッチョ。樽の厚みがあるので、バター系のソースとも好相性です
- ルージュ キュヴェ ルイ ベルサン:鴨のロースト、きのこのソテー、熟成チーズ。全房由来の香りが、香ばしい料理と重なります
- ブラン キュヴェ ルイ ベルサン:牡蠣、魚介のマリネ、和食の椀物。ミネラル感があるので、出汁の旨味ともけんかをしません
ブルゴーニュ最北端のワインは、酸がきれいで和食との距離が近いのが魅力。いつもの食卓に一本あるだけで、料理の輪郭が少しだけくっきりします。
よくある質問
Q. ドメーヌ・ベルサンはどんな生産者ですか?
A. ブルゴーニュ最北端サン・ブリ・ル・ヴィヌーに本拠を置く家族経営のドメーヌです。15世紀からの記録が残る家系で、サン・ブリ、シャブリ、イランシーに合計22ha・6品種の畑を所有。2012年にビオロジック認証(ABマーク)を取得しています。
Q. コート・ドーセールとサン・ブリの違いは?
A. コート・ドーセールはオーセロワ地区の広域アペラシオンで、白はシャルドネ、赤はピノ・ノワール。サン・ブリは村名アペラシオンで、白はソーヴィニヨン・ブラン100%から造られます。
Q. ビオロジックワインは味が違いますか?
A. 一概には言えませんが、ベルサンの場合は香りの層と余韻の伸びに表れます。野生酵母による発酵と、清澄を控えた醸造が、産地の個性をそのまま残しているためです。
Q. 飲み頃と保存方法は?
A. 白は10〜12℃、赤は16〜18℃が目安。白はよく冷やしすぎず、20〜30分前に冷蔵庫から出しておくと香りが開きます。直射日光と温度変化を避け、水平に保管してください。
最後に
派手な売り文句のないドメーヌほど、飲んだときに静かに納得させてくれます。ベルサンのワインは、まさにそういう一本です。15世紀から続く家族の歴史、2012年に取得したビオロジック認証、11〜12世紀のセラー。グラスを傾けるたび、その重なりがゆっくりとほどけていくのを感じられるはずです🍷✨
まずは飲み比べしやすいコート・ドーセールの白2本から。樽あり・樽なしで、同じ造り手の表情がこれほど変わるのかと、きっと驚いていただけると思います。