こんにちは、ワインネーション編集部です!🍷
第1部では濁りワインの基礎知識、第2部では楽しみ方をご紹介しました。
シリーズ完結となる今回は、「なぜ今、世界が濁りワインを選ぶのか」というお話です。
実はこれ、日本だけの小さなブームではありません。イギリスのスーパーマーケットの棚でも、一流レストランのグラスの中でも、濁りワインは確かに存在感を増しています。
世界の動きを知ると、ワイン選びの視点がぐっと広がります。そして最後には、あなたに合う1本を選べるように、タイプ別の3本もご紹介します✨
世界が動いた2026年|スーパーの棚にも「濁り」が並んだ
2026年、イギリスの大手スーパーが濁ったままのスティルワイン(発泡していないワイン)を店頭に並べました。「Trouble(トラブル)」という名前のロゼで、これはフランス語で「濁り」を意味する言葉。イギリスのスーパーで濁ったスティルワインが買えるようになったのは、これが初めてのことでした。
「ついにここまできたか」——ワイン業界でそう受け止められたのには、理由があります。その背景にはペットナットの世界的な人気がありました。泡の濁りが先に市民権を得たことで、濁ったままのワインを受け入れる土壌ができたのです。
同じイギリスでは、大手スーパーがアルゼンチン産のペットナット シャルドネを扱い、有名ブランドのノンフィルターのマルベックが棚に並ぶようにもなりました。濁りや未ろ過は、もう一部のマニアのためのものではなくなっています。
実は数百年前からあった|濁りワインは「再発見」
ここで大切なことをお伝えします。濁りワインもペットナットも、新しい発明ではありません。
ペットナットの製法は、古くから「祖父母の時代の方法(メトード・アンセストラル)」と呼ばれてきました。温度管理も添加物もなかった時代、発酵が終わる前に瓶へ詰めるしかなかった。すると瓶の中で発酵が続き、自然に泡が生まれた——それがペットナットの始まりです。つまり濁りは、近代的な設備ではじめて生まれたものではなく、むしろ原点にあるものなのです。
14世紀の詩人チョーサーは「新しきものは、かつて古きものだった」と記しました。ワインの世界では、この言葉が何度も当てはまります。オレンジワインも、樽発酵も、冷やして飲む赤ワインも。流行として紹介されるものの多くは、昔のやり方を今の言葉で語り直したものなのです。
「新しきものは、かつて古きものだった」
— ジェフリー・チョーサー
世界のレストランでは、もう「普通」になっている
日本の食卓ではまだ珍しい濁りワインですが、世界のレストランではすでに日常の一部です。
たとえばロンドンのレストラングループ、オットレンギではハウスワイン3種すべてが未ろ過・濁ったナチュラルワイン。そのワイン責任者ザイナブ・マジェリコワ氏は、理由をこう語ります。
「テクスチャーがあり、肉厚で、まるみのある果実味がある。だから料理の味に負けないんです」
— ザイナブ・マジェリコワ氏の言葉より(The Guardian)
さらに氏は、濁りが「魂と活気、そして複雑さ」をもたらすとも表現しています。濁りは欠点ではなく、料理と対等に渡り合うための武器。それが世界の現場の実感です。
失敗しない選び方|ラベルで見る5つの合図
ここからは実践です。お店や通販で濁りワインを選ぶとき、ラベルに書かれた言葉が道しるべになります。
- ペットナット/ペティアン・ナチュレル:発酵途中で瓶詰めした自然発泡酒。泡と濁りを一度に楽しみたいならこれ
- ノンフィルター:ろ過をしていないワイン。濁りが残っていることが多い
- ノンファイニング:清澄剤(ファイニング剤)を使っていないワイン
- コルフォンド:イタリア・プロセッコの伝統製法。瓶内二次発酵で澱を残したまま。プロセッコの甘さが苦手な方にも
- シュール・リー:澱の上で熟成させたワイン。旨みと厚みが増します
ただし、ひとつだけ注意を。「濁っている=ノンフィルター」とは限りません。ろ過していても濁りが残ることはありますし、未ろ過でも自然に澄むことがあります。ラベルは造り手の姿勢を示す言葉として受け取るのがちょうどよいでしょう。
🍾 買うときの3つのチェック
- 栓を見る:王冠キャップのペットナットは開栓時に噴きやすい。よく冷やしてから開けるのが安心
- 飲む時期を決める:泡系はフレッシュさが魅力。買ったら早めに開けるのがおすすめ
- 保管は冷暗所:デリケートなワインなので、温度変化を避けて立てて保管
タイプ別・おすすめ3本|予算とシーンで選ぶ
「結局どれを選べばいいの?」という方のために、当店で扱う濁りワインを3タイプに整理しました。軽やかな順にご紹介します🍷
1. 軽やかで毎日の食卓に|キンタ ダ ハーザ ハーザ ペット ナット ブランコ
ポルトガル・ヴィーニョ ヴェルデの生産者による白のペットナット。18世紀から続く家族経営で、ヴィーニョ ヴェルデの概念を変える本格派として知られます。軽快な泡とみずみずしい果実味。まず1本試してみたい方の入門にぴったりです。
2. 華やかな果実感を楽しむ|トゥティ フルッティ アナナス ペットナット ロピット
南フランス・ルーションの自然派が手がけるロゼのペットナット。メルロー90%にバルベーラを10%ブレンドし、糖が残った状態で瓶詰めしています。オレンジを帯びたサーモンピンク、白桃やスモモ、クランベリーのアロマ。キリッとドライな酸と、ほんのり苦みのある果実味。食前酒や前菜、ピザに寄り添う1本です。
3. 特別な日の食卓に|ドメーヌ ヴァインバック PCC(ペットナット)
1612年、アルザス地方カイゼルスベルグ地区にカプチン派の修道僧たちが創立した歴史あるドメーヌ。名前のPCCは、ペットナット、シャスラ、クロ デ カプサンの頭文字です。瓶内熟成38ヶ月、ドサージュなし、SO2も添加せずに造られています。白い花、モモやアプリコットの香り、やさしい泡。食前酒はもちろん、チーズやエスニック料理にも。ギフトにも喜ばれる1本です。
🍷 選び方の早見表
- まず試したい:キンタ ダ ハーザ ハーザ ペット ナット ブランコ(¥2,889)
- 果実味と華やかさ:トゥティ フルッティ アナナス ペットナット ロピット(¥4,041)
- 特別な日・ギフト:ドメーヌ ヴァインバック PCC(¥4,125)
シリーズ完結|濁りワインと、これからの食卓
全3回にわたって、濁りワインの世界を歩いてきました。あらためて振り返ってみましょう。
- 第1部:濁りの正体は澱(おり)。ペットナットとコルフォンドの違い
- 第2部:開栓前のひと振り、温度、グラス、和食との相性
- 第3部:世界の動きと、ラベルから読み取る選び方
濁りは、欠点ではなく個性。
それは造り手が手をかけた証であり、畑と酵母の物語そのものです。
グラスを傾けるたび、その土地の風と、人の手のぬくもりを感じることができるでしょう🍷✨