スーパータスカンとは?これだけは知っておきたい基本と銘柄ワイン

イタリアワインの「スーパータスカン」とは何でしょうか?

イタリアのトスカーナ州で造られ、世界的に認められる高品質であり、ワイン法を超越したワインともいうことができます。今回は、スーパータスカンの基本知識とその代表格のワインをご紹介します。

イタリアのワイン法を超越したスーパータスカン

スーパータスカンとは何かを知るには、まずはイタリアのワイン法を理解することが必要です。イタリアでは、1963年にワイン法が制定されました。フランスのワイン法制定が1935年ですから、フランスに約30年遅れをとっています。

イタリアのワイン法では、上から「DOCG(統制保証付原産地呼称)」「DOC(統制原産地呼称)」「IGT(地理的表示)」「Vino da Tavola(ヴィーノ・ダ・ターヴォラ。現在はVino(ヴィーノ)」の4段階の格付けが定められました。

原産地呼称は歴史的にその土地で伝統的に造られているワインで、土着品種のブドウが使用されることが義務付けられていました。イタリア中部のトスカーナ州のポテンシャルに気づき、トスカーナの原産地呼称に満足していなかったワイン生産者が、、品質重視でワインを造り始めました。あてはまる呼称がなかったにもかかわらず、そのクオリティーが高く評価され、世界を驚かせました。ワイン法を超越して自由な発想で造られたワインは、スーパータスカン(またはスーパートスカーナ)と呼ばれるようになったのです。

その先駆けとなったワインが「サッシカイア」です。

スーパータスカンの誕生「サッシカイア」

サッシカイアが誕生した地、ボルゲリは、フィレンツェの南西方向、トスカーナ州の海岸地帯に位置します。1940年代、この地方のマリオ・インチーザ・ロケッタ侯爵は、大のボルドーワイン好きで、ボルドー5大シャトーのひとつであるシャトー・ラフィット・ロートシルトから、カベルネ・ソーヴィニヨンの苗木を送ってもらい、自家用としてワインを造っていました。その後、天才醸造家のジャコモ・タキスがこれを手掛け、ファーストヴィンテージ1968年が売り出されました。

ボルゲリでは白ワインとロゼワインのみがDOCと規定されていたため、サッシカイアは4段階中最下位のヴィーノ・ダ・ターヴォラでした。それにもかかわらず、1972年ヴィンテージのサッシカイアは、イギリスのもっとも権威あるワイン誌デカンターのブラインドテイスティングで、ボルドーの一級シャトーを打ち破ったのです。そのニュースは世界を驚かせ、サッシカイアはトップスターの座に躍り出ました。

サッシカイアに続き、スーパータスカンを造る生産者が次々と現れ、1980年代に国際的ブームとなり、スーパータスカンは高値で取り引きされるワインとなりました。

呼称を名乗ることができないにもかかわらず、高級ワインとなったという逆転現象を起こしたスーパータスカン。ルールから外れたときに実力を発揮するのは、イタリア人ならではといえます。

なお、1994年にサッシカイアはDOCに昇格します。その名も「ボルゲリ・サッシカイアDOC」。ワインの名前にDOCが付く唯一のケースとなりました。

スーパータスカンの地、ボルゲリ

ワイン産地としては無名だったボルゲリが、スーパータスカンで成功をおさめたことには、理由があります。ボルゲリは、気候と土壌がボルドーに類似しているのです。ボルドーは、もともと沼沢地で、オランダ人の手により開拓されたという歴史があります。ボルゲリもかつては湿地帯で、19世紀半ばにマラリア対策として大規模な干拓がおこなわれました。ボルゲリは、ボルドーより多少温度が高く、降水量が少ないですが、ボルドーと同様、カベルネ・ソーヴィニヨンに適した気候の地といえます。そして、土壌は砂質が多く、これもまたカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適しています。粘土質の土壌は、ボルゲリの気候と相まって、メルロの栽培にも最適な場所となっているのです。

また、スーパータスカンは醸造方法も革新的でした。温度管理のできるステンレスタンクで発酵をおこない、バリック(小樽)で熟成させました。スーパータスカンが誕生した当初、イタリアではスロヴォニアン・オークの大樽でワインを熟成させるのが主流でした。フレンチ・オークのバリックを使用したことは挑戦的なことだったのです。

スーパータスカンは、フランス品種であるカベルネやメルロなどで大ヒットしましたが、フランスワインとは別の味わいの、トスカーナのテロワールが感じられるすばらしいワインとなったことが注目に値します。

キャンティ・クラシコ地区のスーパータスカン

スーパータスカンは、ボルゲリ地方だけでなく、内陸にあるキャンティ・クラシコ地区(フィレンツェとシエナの間の丘陵地帯)でも誕生しました。キャンティ・クラシコの主要品種であるサンジョヴェーゼだけでなく、国際品種にも対応できる優れた土壌があったからです。その先駆けといえば「ティニャネロ」。1971年に名門アンティノリ家により造られたワインで、こちらも天才醸造家ジャコモ・タキスが手掛けました。ティニャネロはサンジョヴェーゼが主体となっていますが、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランがブレンドされます。当時、キャンティ・クラシコは国際品種を使用することはできず、白ブドウをブレンドすることが義務付けられていました。それに疑問を感じたアンティノリは、キャンティ・クラシコの呼称にはあてはまらないヴィーノ・ダ・ターヴォラとしてティニャネロを売り出しました。

その後、キャンティ・クラシコの規定は変更され、白ブドウをブレンドする義務はなくなりました。ティニャネロは、今となってはキャンティ・クラシコと名乗ることもできますが、キャンティ・クラシコの地で革命を起こしたティニャネロは、スーパータスカンとして輝き続けています。

モンタルチーノ地区のスーパータスカン

モンタルチーノ地区は、イタリアで最も偉大なDOCGワインのひとつ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの産地です。フィレンツェの南方にあるシエナよりさらに南に位置しています。高級ワインが生まれる場所で造られるスーパータスカンは数少ないのですが、そのリーダー格は「ルーチェ」です。

トスカーナの名家マルケージ・ディ・フレスコバルディとカリフォルニアワインの父といわれるロバート・モンダヴィにより1995年に創設されたワイナリーであるルーチェ・デッラ・ヴィーテのルーチェ。

スーパータスカンとしては後発のルーチェですが、アメリカのワイン誌ワイン・スペクテーターで、いきなり1995年ヴィンテージが世界のトップ100に入りました。

モンタルチーノ地区は、サンジョヴェーゼの栽培に適した土壌となっています。ルーチェの農園があるのはモンタルチーノ西部で、ここはメルロの栽培にも向いた粘土質土壌があります。ルーチェは、サンジョヴェーゼとメルロのブレンドで、濃縮感のある果実味とスパイスの濃厚なアロマが感じられる、骨格のあるボディのワインで、モンタルチーノのテロワールが反映した厳格な味わいです。

まとめ

自由な発想から生まれたスーパータスカンは、イタリアの産地と技術を世界に見せつけました。単なる高級ワインではなく、それぞれの卓越したテロワールを表現するワインです。世界の脚光を浴び続け、これからも国際的なトップワインとして君臨し続けるでしょう。

太田 由歌
イタリア在住ワインコーディネーター。 2004年よりフィレンツェ在住。イタリアソムリエ協会ソムリエ資格保持。 トスカーナのワイナリーツアーを企画・主宰し、通訳案内もしている。 フィレンツェ・イン・タスカ代表